もう悩まない! ハンドのルール 総まとめ【サッカーのルール】

 意図的じゃなければノーハンド? ボールとの距離が近ければノーハンド?

 ハンドの判定において、どんな考慮事項があるか 分かりづらい印象はありませんか?サッカーのルールの中で最も難しい判定の1つ。それがハンドの反則です。誰がどう見ても手にボールが当たった状況において、反則となる場合もあれば反則とならない場合もあります。

 2020年9月20日に行われた J2リーグ 第20節 ジュビロ磐田vs栃木SCの一戦において、80分に磐田の山本 義道選手がハンドの反則を取られ栃木SCにPKが与えられました。みなさんは主審の判定をどの様に考えますか? ボールが手に当たっているのは明らかですが、その直前にジャンプしているので 手や腕の動きは自然な様にも感じます。(以下 YouTube参照)

 ジャッジリプレイでも度々ハンドの解説が行われますが、個別の判定に対する説明が多く、体系的に学ぶ機会があまりありません。そこで、本記事では「ハンドのルール 総まとめ」と題して、ハンドのルールについて1から10までまとめて紹介します。この記事を最後まで読めば、ハンド(っぽい)事象を見た時に何が論点なのかが分かるようになります。少し長いですが、ぜひ 最後までお付き合いください。


判定の導き方

何を見て、どう判断するか

 サッカーは主審の主観によって多くの判定がなされるスポーツです。ただし、何でもかんでも主観的なイメージや印象だけで判定する訳ではありません。

【事実】×【主観的判断】×【競技規則】

 審判員は、この3つの要素によって判定を下します。【事実】とは、誰が見ても判断が変わる事のない客観的な材料。例えば、手や腕にボールが当たったか、当たった時の手や腕の位置などです。そして【主観的判断】は、審判員が主観で判断するもの・・・意図的にボールに触れたかなどです。

 この様に、眼(時には耳)から得た【事実】を元に、競技規則と照らし合わせて【主観的判断】で判定を決めます。これら、判定を決めるにあたっての考慮事項をConsideration Pointと呼びます。

競技規則-ハンドに該当する条件

 続いて、競技規則を確認していきましょう。競技規則の「第12条 ファウルと不正行為 1.直接フリーキック」より、ハンドの反則に該当する箇所を引用します。#1

競技者が次のことを行った場合、反則となる。
・手や腕を用いて意図的にボールに触れる。
・ゴールキーパーを含め、偶発的であっても、手や腕から相手チームのゴールに直接得点する。
・ボールが自分や味方競技者の手や腕に触れた直後に
 - 相手競技者のゴールに得点する。
 - 得点の機会を作り出す。
・次のように手や腕でボールに触れたとき
 - 手や腕を用いて競技者の体を不自然に大きくした。
 - 競技者の手や腕が肩の位置以上の高さにある

 若干 長ったらしいですが、ポイントとしては ①意図的かどうか ②ゴールの前に触れたのが手や腕か ③手や腕に当たった直後に、得点 又は得点機会が生まれたか ④手や腕が不自然な位置にあったか、の4つです。そして大切な事は「意図的かどうか」だけが全てではない、という事です。例え意図的でない場合でも②③④のいずれかに該当すれば反則となります。

 それでは1つずつ、解説していきましょう。


ポイント①
・手や腕を用いて意図的にボールに触れる。

 当たり前の話ですが、意図があったかどうかは競技者本人にしか分かりません。そこで、審判員は主に「手や腕の動かし方」を見て意図の有無を判断します。ポイントは、手や腕がボールに向かったのか ボールが手や腕に向かったのか。手や腕がボールに向かっていればハンドの可能性が高くなり、ボールが手や腕に向かっていれば低くなります。(以下 YouTube参照)

 記憶に新しい2020シーズン J1リーグ 開幕戦のワンシーン。手がボールに向かったか、ボールが手に向かったか。恐らく、殆どの人が前者と感じたのではないでしょうか。この様に、手や腕がボールに向かった場合、競技規則の「意図的にボールに触れる」に該当して反則となります。


ポイント②
・ゴールキーパーを含め、偶発的であっても、手や腕から相手チームのゴールに直接得点する。

 ③と似ていますが「ゴールキーパーを含めて」がポイントです。つまり、キーパーが自陣ペナルティーエリアから投げたボールが、他の競技者が触ることなく相手ゴールに直接入った場合に得点を認めない、という事。通常、考えられないケースですが「手や腕から直接生まれた得点は一切認めない」というサッカーの精神から明記されています。


ポイント③
・ボールが自分や味方競技者の手や腕に触れた直後に
 - 相手競技者のゴールに得点する。
 - 得点の機会を作り出す。

 攻撃側のチームに関するルールです。手や腕に当たったボールが、その直後に得点する(ゴールラインを越える)または得点の機会を作り出すとハンドの反則となります。ポイントは、意図があったか(①)・手や腕が不自然な位置にあったか(④)を一切考慮せず、例え偶発的であっても手や腕にボールが当たったという事実だけで反則になる、という事です。

 また、”直後”がどこまでを範囲とするのかについては、競技規則において客観的な指標は記載されていません。また、日本サッカー協会(JFA)が発行した「2020/21競技規則 変更と明確化」#2 において「ボールがある程度の距離を移動した場合、またはいくつかのパスが交換された場合は、反則とならない。」とあり、ある程度の時間が経てば”直後”とは言えなくなります。

 例えば、以下のケースにおいては ボールが腕に当たってから約4秒経過した後に得点が生まれました。これを”直後”と見なすかどうか。ジャッジリプレイでは「直後ではない(=得点を認める)」との説明があり、JFA審判員会は「直後である(=得点を認めない)との見解を示しました。JFA審判委員会の公式見解が日本国内における正解となりますので、このケースは”直後”でありハンド。ただし、ジャッジリプレイの説明のとおり 同じ秒数でも主審によって判断が分かれる可能性がありそうです。今後、一つの指標になるケースと言えるでしょう。(以下 YouTube参照)


ポイント④
・次のように手や腕でボールに触れたとき
 - 手や腕を用いて競技者の体を不自然に大きくした。
 - 競技者の手や腕が肩の位置以上の高さにある。

 そして4つ目が、ボールが当たった時の手や腕の位置がどうだったか。手や腕が水平方向(横方向)に開いて不自然に大きくした場合や、肩の位置以上の高さにある場合に反則となります。ポイントは、意図的かどうかは考慮されず、手や腕の位置のみで判断されます。事例を見てみましょう。(以下 YouTube参照)

 冒頭で紹介した磐田の山本 義道選手のケースは、ボールが手に向かっているので ①意図的かどうか には該当せず、守備側ですので②③にも該当しません。④ 不自然な位置にあったかどうか、が争点となります。映像を見返すと試合時間 81:25 のスロー再生で腕の位置が確認できます。筆者の印象としては 70~80° 程度、脇が開いているように見えます。

 これだけ脇が開くと”不自然に大きくした”に該当する可能性が、非常に高くなります。これを不自然ではないという理由で反則としないなら、それは誤った判定であると言って良いくらいのもの。つまり、磐田サポにとっては不利な判定でしたが、松本主審の判定は全くもって正しかったと筆者は考えます。

 それでも、納得できない人もいると思います。ボールとの距離が近い事とディフェンスの身体の使い方としては自然であるという2つの観点。ですが、現在のルールにおいて、どちらも考慮事項には該当しません。2018-19の競技規則までは距離を考慮していましたが、現在は 距離が近くても①~④のいずれかに該当すれば反則となります。

 また、山本 義道選手は直前にジャンプしているので、手や腕があの高さにあるのは仕方がないとも言えますが、競技規則上のポイントは「不自然な動きか」ではなく「ボールが当たった瞬間の手や腕の位置が不自然か」です。ジャッジリプレイで上川徹 元JFA審判員長も「手や腕を高く上げたり、横に開く行為そのものにリスクがある」と述べています。

 あれがハンドになるのならディフェンスはどう守れば良いのか、と感じるのは当然。ディフェンスにとっては非常に厳しいルール。ですが、審判員はあくまでルール(競技規則)に基づいて判定します。納得いかない判定があった際、主審の判定に納得いかないのか、ルールに納得いかないのかは分けて考える事が大切です。

競技規則-ハンドに該当しない条件

 これでハンドの理解は完璧!・・・と言いたいところですが、ハンドの反則がややこしいのはここから。これまでハンドに該当する条件を述べてきましたが、条件に該当しても別の条件が加わってハンドではなくなる場合があります。再度、競技規則を引用します。#1

次のようにボールが競技者の手や腕に触れた場合は、反則ではない:
・競技者自身の頭または体(足を含む)から直接触れる。
・近くにいた別の競技者の頭または体(足を含む)から直接触れる。
・手や腕は体の近くにあるが、手や腕を用いて競技者の体を不自然に大きくしていない。
・競技者が倒れ、体を支えるための手や腕が体と地面の間にある。ただし、体から横または縦方向に伸ばされていない。

 上記は「④手や腕が不自然な位置にあったか」の例外と考えてください。つまり、ボールが当たった瞬間に脇が開いていたり 肩の位置以上にあった場合でも、例外に該当する事で反則とはなりません。ややこしいですが、1つずつ解説していきますので ぜひ理解してください。


例外A
・競技者自身の頭または体(足を含む)から直接触れる。

 映像を見ればすぐ分かります。ジャッジリプレイをご覧になってる方にはお馴染みのシーン。青の選手が意図的に脚でプレーしたボールが、その直後に左腕に当たりました。当たった瞬間の脇の開き具合は90°近く開いてるようにも見えますがノーファウル。理由は、意図的にプレーした後に直接腕に触れたからです。(以下 YouTube参照)


例外B
近くにいた別の競技者の頭または体(足を含む)から直接触れる。

 これも映像を見ればすぐ分かります。見えていない場所からボールが来るなど、予測できないケースが該当します。ちなみにですが、磐田の山本 義道選手の例をこの例外に当てはめるのは難しいと考えます。相手選手が胸トラップしてからシュートを打つまで全て山本選手の視野内で行われていたので、例外には該当しません。(以下 YouTube参照)


例外C
手や腕は体の近くにあるが、手や腕を用いて競技者の体を不自然に大きくしていない。

 これは映像無しでも理解できると思います。手や腕がきれいに折りたたまれて身体に密着していれば、例えボールが当たっても反則ではありません。「不自然な位置にあって 不自然に大きくしていない」と考えると矛盾していますが、「手や腕が体に密着していて、不自然に大きくしていなければハンドではない」と理解しましょう。


例外D
・競技者が倒れ、体を支えるための手や腕が体と地面の間にある。ただし、体から横または縦方向に伸ばされていない。

 いわゆる”支え手”です。スライディングする時や、倒れた状態から身体を起こす際に手を地面に着ける行為は人間の自然な動作です。そのため、これらの最中にボールが当たっても反則とはなりません。とは言え、どれだけ伸ばしても良いかというそうではありません。不必要に大きく伸ばしたら反則の可能性が出てきます。下の映像のケースにおいて、結構 腕を伸ばしてるようにも見えますが、この程度は反則ではないという事が分かります。(以下 YouTube参照)

反則となる部位

 腕とはどこなのか。肩と腕の境目はどこか。競技規則 2020-21にて明確に定義されました。以下の映像を見れば簡単に理解できると思います。「腕」と定義された場所に当たり、かつ①~④に該当すればハンドの反則と判断されます。もちろん、例外A~Dも踏まえて判定が行われます。(以下 YouTube参照)

 中学生以上が使用する5号球は直径が約22cmあるので、身体との接地面を特定するのが難しいですが、少なくとも腕の付け根付近に当たった場合は 競技規則上の”腕”には該当しません。冒頭の山本 義道選手のケースで、直前に相手選手が腕付近でトラップしていますが、これは”腕”でしょうか? 80:59の映像を見る限り腕の付け根付近でトラップしているため、主審は正当なプレーと判断しました。

まとめ

 長くなってしまったので食傷気味だとは思いますが、最後にまとめたいと思います。

  • 審判員は 【事実】×【主観的判断】×【競技規則】で判定を決める
  • ハンドの条件は4つ
     ① 意図的かどうか 
     ② 手や腕から直接得点したか 
     ③ 手や腕に当たった直後に得点 又は得点機会が生まれたか 
     ④ 手や腕が不自然な位置にあったか
  • ④に該当してもハンドにならない例外条件は4つ
     A 意図的にプレーしたのちに手や腕に当たる
     B 近くにいた別の競技者の頭や体から直接触れる
     C 手や腕で体を不自然に大きくしていない
     D 体を支える手や腕に当たる
  • “腕”は脇の下の最も奥が上限

 ハンドのルール解説は以上になります。試合中にボールが手や腕に当たったら、この記事の内容を思い出してハンドの反則かどうか考えてみましょう!


[引用資料] 出典:
#1 サッカー競技規則 2020/21
#2 2020/21競技規則 変更と明確化[20.05.14]

[YouTube 引用]:

1.【公式】ハイライト:ジュビロ磐田vs栃木SC 明治安田生命J2リーグ 第20節 2020/9/19

2.2020シーズン開幕 リーグ戦初のVAR判定!【Jリーグジャッジリプレイ2020 #1-1】

3.2020/21年サッカー競技規則 攻撃側のハンドの変更点とは?【Jリーグジャッジリプレイ2020 #14-1】

4.【修正版】JFA-TV 2019/20 サッカー競技規則の改正について

5.2020 レフェリング スタンダード

6.2020/21サッカー競技規則改正 説明映像

競技規則
  • 第12条 1.直接フリーキック

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