【目的地 見えぬ航海】J2 第24節 ジュビロ磐田×京都サンガ マッチレビュー

1.システム及びメンバー構成

ジュビロ磐田
 衝撃のフベロ(前)監督解任からわずか2日で迎えた一戦。後を継いだ鈴木新監督は3-4-1-2という、絶滅危惧種と言ってよい程 近年見なくなったシステムを採用した。DFには13試合ぶりの出場となる今野を中心に、左に伊藤、右に山本ノリ。大森と松本をWBを配置し、トップ下に山田という布陣で臨む。

【京都サンガ】
 対する京都は前回対戦と同じ3-1-4-2のシステム。センターラインはヨルディ・バイスと庄司という鉄板のコンビ。ピーター・ウタカと2トップを組むのは横浜F・マリノスから出戻りとなった仙頭。昨季まで磐田に所属した荒木は残念ながら登録外となった。

それでは、試合を振り返っていこう。

2.前半のポイント

磐田の狙い(守備)

 鈴木新監督がどの様なサッカーを見せるのか注目された序盤。立ち上がり直ぐに守備面の狙いをはっきりと示す場面が生まれた。開始2分、京都がDFラインでボールを持って地上戦によるビルドアップを開始。左サイド(磐田の右サイド)からの前進を狙う。

 磐田は京都DF3枚への前プレスを行わず、ファーストプレスラインを京都のアンカーポジション(庄司)の高さに設定。ミドルゾーンで迎撃する構えだ。京都は、IHの福岡がHVの本多からパスを受けて前方にターン。落ちてきた仙頭に斜めの楔を入れる。

 磐田が採った守備の対応は、人海戦術によるビルドアップの阻害であった。相手のビルドアップをサイドに誘導し、ミドルゾーンで人数を投入して密の状態を作り出す。そして奪う。開始2分のこの場面では、京都3枚(FW・WB・IH)に対し、5枚投入する磐田。山田・上原・山本 康裕・松本・山本ノリの5人でボールを奪いきった。(下図参照)

磐田の狙い(攻撃)

 攻撃に関してはFWを目がけたロングボールも目に付いたが、地上戦でよく見られたのがアンカー脇の攻略であった。守備時の京都は2トップがサイドに出る事は少なく、磐田のHVがボールを持った際にはボールサイドのIHが前に出て対応。そのため、セカンドラインは2枚(逆サイドのIHとアンカー)又は1枚(アンカー)のみとなる。

 この仕組みを利用し、開始5分で先制点を奪う事に成功する。流れはこうだ。右HVの山本がボールを持ち、IHの福岡が前に出て蓋をする。相手IHによって上原へのルートが消された山本だったが、松本を経由してボールを供給。IHが不在となったアンカー脇で上原が余裕を持ってターンし、小川 航基にミドルレンジのパス。シュートがディフレクトしてコースが変わる幸運があったものの、相手の立ち位置やプレスのかけ方を逆手に取った見事な先制点であった。(下図参照)

 繰り返しになるが、ボール非保持の守備では人海戦術により相手からボールを奪う。攻撃ではロングボールを織り交ぜつつ、地上戦でアンカー脇(IHの背中)のスペースを狙って前進する。この2つが磐田の主な狙いであった。

飲水タイム後の修正

 京都は12分にも似たような形で前進を許す。今野からパスを受けた松本が、インサイドでサポートする山本 康裕にパス。松本と山本によって喰いついたWB(黒木)の背中にトップ下の山田が進入。山本 康裕がワンタッチで山田に当てて前進し、最終的には山田がクロスを入れるという流れであった。

 そして迎えた前半の飲水タイムで京都は修正を試みる。攻撃(磐田の守備)に関してはFWの立ち位置を変更。それまで横関係になる事が多かった2トップだったが、縦関係になって低い位置のFWがMF化。これによって人海戦術を採る磐田の中盤に対して数的不利を解消しようとする狙いがあったと思う。

 それ以外に、DFラインでボールを持った際に、アンカーとIH2枚がオフザボールで大きく動き始める。お互いの中盤が噛み合う(アンカーと山田、IH2枚と上原・山本)事を利用し、京都は中盤のトライアングルの距離感を自ら広げる事で 追随する磐田のトライアングルを歪にする場面が発生。そして、磐田MFを動かして空けたスペースに仙頭が顔を覗かせる回数が増加。

 一方で、守備(磐田の攻撃)に関しては、アンカーの庄司のポジショニングを修正。飲水までは、磐田の2トップを気にしてか中央でステイする事が多かったが、飲水後は積極的に前に出るようになる。狙いは大外のWBに対してインサイドでサポートする磐田のDH(山本・上原)を消すこと。前に出る事で発生する背中のスペースは3CBの押し上げで潰す対応に変更した。


 攻撃と守備の両方で修正を試みた京都。攻撃に関しては効果的な攻めを見せる事が出来なかったものの、磐田のMF(特にDHの2人)が人を捕まえる意識の強い事を明確に察知したと思う。ボール保持の際にIHが大きく動き、磐田DHを追随させてスタミナを少しずつ削っていく。守備に関しては、磐田のDHをフリーにさせない狙いがはまる。DHからの展開を阻害する事で、アンカー周辺のスペースが使われる場面を減らした。(下図参照)

 磐田は45分にフベロ監督時代を思わせる攻撃を見せた。左サイドで山田がWBの裏に進入し、右HVを引っ張り出す。中野がHV-CB間のスペースに走りこみ、更に山田がペナ角からボックスに入ってマイナスのクロス。シュートには繋がらなかったが、スペースと背後を上手く突いた攻撃であった。

 試合は1-0のまま後半へ。

3.後半のポイント

交代策でMFを強化する京都

 この試合、先に動いたのは京都だった。右IHの中野に代えて野田を投入。野田とウタカの2トップとなり、仙頭が右IHに移動。この交代策は見事にハマったと思う。守備(磐田の攻撃)に関しては、DHを消すタスクをアンカー(庄司)から野田に変更。庄司をアンカーポジションから動かすことなく、磐田のDHを消す事に成功する。

 攻撃に関しては、前半に引き続き中盤3枚に加えて野田もMFに加わって磐田のトライアングルを動かす。磐田は中盤のバランスが崩れ始め、ジリジリとスタミナも削られる展開。62分には磐田のトライアングルを動かし MF-DFラインのスペースを拡大。そのエリアでウタカと野田の連携で起点を作り、最終的にシュートまで持ち込むという流れであった。

磐田MFに負荷をかけ続ける京都

 磐田の中盤は 60分頃から運動量が落ち始める。59分の同点シーンは一見するとウタカの個人技のように見えるだろう。確かに、フィニッシュそのものはスーパーなのだが、自陣ペナ付近で今野とウタカの1対1を作られた点は反省材料である。パスがウタカに入る1つ前の場面で、DFのフィルター役である上原に対し、京都はバイスをMFに押し上げて瞬間的に2対1を形成した。(下図参照)

 これによって上原のフィルター機能が無効化されたわけだが、そもそもバイスは誰が対応すべきだったか。山田がそのタスクを担うべきだったと個人的には感じるが、近くにいた山田が寄せきれなかった理由はスタミナが削られた事が起因しているかもしれない。なお、この時間帯から山田だけでなく山本 康裕の運動量低下もかなり目立ち始めていた。

アンコレクティブ フットボール

 後半の飲水後に磐田が見せたサッカーは、アンコレクティブ(非組織的)フットボールというのが率直な感想である。既に述べたとおり、野田によってDHを消された磐田は地上戦での苦戦が続く。何とか打開策を見出すべく多人数が近距離でサポートし合ってショートパスの連続で前進を狙うが、近距離でサポートし合う=相手も近距離にいる という状況を作ってしまう。

 図らずも(意図的に図って?)作り出された密集に対し、ドリブルで突破できる選手はおらず、ユニットでの前進もできないため効果的な形を見いだせない。近距離でサポートし合うので一応パスは繋がるのだが、ボールを受けては次を探しての繰り返し。即興性の強い攻撃に終始した。

 守備に関しては、DHを中心にとにかく人を捕まえに行く傾向は変わらず。82分には、相手ペナまで攻め込み山田のクロスがカットされたところで、京都のカウンターが発動。上原はボックス付近まで攻めあがっていたので、後方のDHは山本 康裕1枚のみ。タッチライン際から前進する京都に対し、山本 康裕がマーク対象のIHを潰すべくタッチライン際まで出ていって対応。

 山本のクリアボールが伊藤に当たる不運もあり、こぼれ球を拾われて京都のカウンターは途切れず。DFラインが暴露された状態から、左IHにドフリ―でボックスに入られるという状況を作られてしまった。その後の時間帯はカオスの連続。「とにかく対面にいるボールホルダーの前に立つ」という意識のため、2人で1人をマークしたり、必要のないカバーに動くといった判断ミスも顕著に。余裕が全くない状況となり、ボールウォッチャーを繰り返す振る舞いは、京都の逆転弾を自ら呼び込む格好となってしまった。

4.あとがき

今後の修正ポイント

 新監督に与えられた準備期間はたった2日であった。報道によると、守備の修正に時間を費やしたようであるが、人海戦術で何とかする守備のやり方は今後どうなるだろうか。正直なところ、磐田が持ち出したソリューション(人海戦術)は前近代的であるとは思うが、だからと言って勝てないとも限らない。

 1つはスタミナの消耗をどうカバーするかがポイントと考える。京都は交代策を使ってIHの燃料補給を行ったのに対し、磐田は2DHともに交代無し。交代要員にボランチ適正のある選手を入れてなかった事もあると思うが、DHが広範囲に動く事が前提となっているので試合中の交代は必須と考える。CBには大井を据えて、上原・山本 康裕の他にも今野やムサエフといった可動域の広い選手に期待したい。

 攻撃に関しては、後半の頭に決定機を複数回作った。カウンター・セットプレーのこぼれ球・ロングボールの裏抜けがそれぞれ1回ずつである。それ以外に、トップ下の山田がサイドに流れてWBの裏で起点を作る形が前半に2回見られた。”2回”という回数をもって「再現性ある攻撃」と言えるかは微妙なところだが、1つの形として今後も見られるだろう。

 問題はセットオフェンスで、この試合でフリーのDHを消されてから地上戦が難しくなってしまったように、ファーストプランを対策されてから試合中にどう修正していくかが課題である。そうなった時にカウンター以外にチャンスを作れるか。前任者のスタイルを明確に否定する雰囲気を感じたので、即興性のレベルアップに期待するしかないだろうか…

遠藤 保仁という存在

 そして、遠藤 保仁の加入である。そのキャラクターが前任者の方向性と大きく違う点は一旦置いておいて、彼が加入する事でどうなるかを考えてみたい。まず、期待できるのはセットプレーのキッカーとしての質。現状、FKでは上原のキックがかなり向上してきているが、実際のところは岡山戦の1本のみ。直接FKを狙える場面や、CKからの得点力アップは大いに期待したいところ。

 ポジションについては、3-4-1-2ならトップ下かボランチだろう。どこに入ってもボールに触れる回数を多くする事で、磐田がボールを握る時間は増えるだろう(それが効果的かどうかはまた別の話)。ただし、トップ下なら山田が見せた様にWB(SB)の裏に流れて起点を作る動きや守備時にはプレスバックする必要があるし、ボランチなら守備の際にボールサイドに寄って圧力を掛け続けなければならない。

 遠藤が入って同じ事が出来るのか、出来ないなら足りない分を誰がカバーするのか、という点が懸念される。フベロ前監督を解任したフロントには相当に失望したが、勝利が必要な状況は監督が誰であれ変わらない。動き出した船がどこに進むのか、今のところ視界不良であり、結果(勝利)を出せなければ遭難し続ける事になる。クラブとして少しでも前進するためにも、次戦の勝利を心から願っている。


試合情報
磐田 1 – 2 京都(1-0 , 0-2)
主審:松尾 一 副審:清水 崇之・藤澤 達也 4th:唐紙 学志
入場者数:4,278人(入場人数 制限有)
天候:曇り

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