【ブレイクスルーを信じて】J2 第12節 ジュビロ磐田×ジェフユナイテッド千葉 マッチレビュー

 大宮戦で1ポイントを掴み取って再び上昇気流に乗りたいジュビロ磐田がホームで迎え撃つは、尹晶煥監督率いるジェフユナイテッド千葉。就任1年目ながら尹監督の手堅いサッカーが浸透しており、順位こそ上位でないものの11試合で8失点と一定の結果を出している。千葉の堅い守備ブロックを磐田がどうこじ開けるかに注目が集まった。

 終わってみれば試合結果は1-2の敗戦。ボールを握って多くのシュートチャンスを作り出しながらの敗北は、磐田サポーターにとってショッキングな結果であった。完敗だったのか、それともアンラッキーな負けだったのか。思うような結果が出ない状況では、疑心暗鬼で物事を考えてしまいがちである。こんな時こそ感情論ではなく論理的に試合内容を捉えるべきだ。

という訳で、この記事では試合の振り返りに加えて、現在の磐田が抱える問題点について考察していく。


1.システム及びメンバー構成

【ジュビロ磐田】
 ホームの磐田はいつもの4-4-2。前節から4人を入れ替えた。伊藤はボランチでの起用となり、大井と藤田がCBでコンビを組む。前線は小川(航)とルキアンの2トップ。

【ジェフユナイテッド千葉】
 こちらも予想どおりの4-4-2。過密日程のコンディションを考慮して前節から9人を入れ替えた。川又・田口・安田という懐かしい面々がそろってスタメン入り。

それでは、試合を振り返っていこう。いざいざ!

2.試合のポイント

① 千葉の狙い

 まずは、この試合における千葉の狙いから振り返っていこう。千葉は攻守ともに4-4-2を維持するオーソドックスなスタイルである。失点しない事を第一に考え、ボール非保持はコンパクトな4-4-2を形成。セットディフェンスでは無理な前プレスを行わず、一定の圧力をかけながらブロックの外側にボールを誘導する。出来るだけブロック内部にスペースを作らないようにしつつ、内側へのパスルートを遮断しながらボールホルダーにプレッシャーをかける。 

 攻撃で肝となっているのがポジティブトランジション。DFラインでボールを奪ってから”アンカー脇”という磐田のウィークポイントを経由して素早い前進を狙う。それ以外にも、CFの対人の強さを活かした形がある。この試合でその役割を担ったのが川又 堅碁だ。意識的にCBと川又の1vs1を作り出し、そこを起点にゴール前になだれ込んでいく狙いが見て取れた。(下図参照)

② 磐田の対応(セットディフェンス)

 そんな千葉に対して磐田はどう対応したか。敗戦の原因となった2失点にフォーカスをあてていく。まずは、セットディフェンス。相手がボールを持った際にブロックを組んで待ち受けるセットディフェンスに関して、川又の対応に苦戦したものの全体的には安定していた。唯一、40:45~の流れでSBのゲリアにゴールライン際まで進入されたが、山田がゲリアをマークしていれば起きなかった場面と考える。よって、組織全体として考えれば概ね問題は無い。

③ 磐田の対応(ネガトラ)

 続いて攻撃から守備に切り替わった際のネガティブトランジション。いくつかのキーワードに基づいて考えてみよう。

1)アンカー脇
 セットオフェンスの磐田は、ボランチをディフェンスラインに落とした3-1-4-2を形成する事が多い。状況によってはボランチが落ちない事もあるが、その際 2ボランチが縦関係となり、後方に残ったボランチがアンカー役を担う。そのため、いずれの場合もアンカー周辺にスペースが存在している事になる。3-1-4-2の構造上の弱みである。そして、このスペースを上手く使われてしまったのが、千葉の1点目のシーンだ。(下図参照)

 アンカー(=1ボランチ)システムには、アンカー脇のスペースをどうするか問題が常に付きまとう。この問題を解決するに当たって「それなら、システムを変えれば良いじゃないか」という意見もあるだろう。しかしながら、フベロ監督は昨季終盤から一貫して、このシステムを採用している。そのため、ここから先は今後も3-1-4-2を継続する(構造上の弱みを許容する)前提で話を進める。

2)カウンタープレス
 ネガトラ発生時の磐田は、カウンタープレス(即時奪回)によってショートカウンターもしくは2次攻撃の展開に繋げる事が基本的な狙いである。松本山雅戦ではこの戦術が見事にハマり、小川(航)・大森・山田・上原を中心に、カウンタープレスによってことごとくボールを回収していた。しかしながら、カウンタープレスにはリスクが伴う。上手くハマれば良いが、プレスが周囲と連動していなかったりプレスそのものが剥がされた場合は、後方への展開を許す事となる。

 千葉の2点目は、カウンタープレスを採用する磐田だからこそ起こった失点と言えるかもしれない。以下のツイートは、磐田サポのそうさんが2点目の逆起点となってしまった山田がシュートを打った瞬間の配置を図にしたものである。

 ネガトラが発生すると、位置的に千葉が有利な配置であった事が図から分かる。その上で、この記事ではシュート選択の是非ではなく、シュートを撃った後の対応に注目する。安田がボールを拾った直後、山田はカウンタープレスを行い、右隣りにいた櫻内はプレスをかけていない。つまり、山田が単独でプレスをかけた結果、剥がされて相手の前進を許す流れとなった。シュートを選択した判断だけでなく、ここにも問題があったと考える。

 連動したプレスをかけるか、もしくはファウルしてでも剥がされない。カウンタープレスを採用する以上、剥がされた場合のリスクは常につきまとう。だからこそ、プレスの精度や連動性を高めなければならない。山田の甘いプレスは高い代償を払う結果となってしまったが、今後の教訓としてカウンタープレスの質を高めていってほしい。

3)撤退守備
 カウンタープレスをネガトラ発生時における選択肢の一つとする磐田だが、当然、状況によってはボールホルダーにプレッシャーをかけられない事もある。その際、磐田のCB陣は前に出て相手FWを掴むのではなく撤退を選択していた。(下図参照)

 39:45~の一連のシーン。磐田はDFラインから山田に縦パスを送るが、相手選手に囲まれてボールをロスト。山田は体勢を崩して尻餅をついているためカウンタープレスをかけられず、千葉のボールホルダー(田口)がフリーで前を向く。この瞬間、磐田のCB陣は前に出て対応するのではなく後ろに重心を下げて待ち構える”撤退”を選択した。

 もちろん、撤退を選択したのには理由があるはずだ。FWを掴もうとして剥がされて”かけっこ”になってしまった場合、大井と藤田が得意としないスプリント勝負になる。出来れば避けたい。また、過密日程の疲労が影響し、尚更スプリントを嫌って撤退を選択した可能性もある。

 しかし、理由はあっても掴まない結果として相手の前進を容易に許した現実がある。山田のボールロストの瞬間、上原とCB陣との間には約15mのスペースが存在していた。広大なスペースでボールを受けたFWはどんなプレーを選択するだろうか。最終的には相手のパスミスによってシュートこそ撃たれなかったものの、簡単にペナルティーエリアに進入されてしまった一連のシーンであった。

④ 改善策(守備面)

 ここまでネガトラ発生時の問題点を述べてきたが、どんな改善策があるだろうか。カウンタープレスに関しては、前述のとおり この戦術を採用する以上はプレスの質と連動性を高めるしかない。そして、アンカー脇のスペースとネガトラ時にCBが撤退する問題については、CBが前に出て潰す事で両方を解決できるものと考える。(下図参照)

 千葉の様に、ポジトラの際にDFラインから少ない手数でFWに当てて起点を作ろうとする相手に特に有効となるはずだ。パスカットしてマイボールに出来れば成功と言えるし、それが出来なくても剥がされずに相手をロックしておく事で周囲の選手のプレスバックが期待できる。本来、大井は前に積極的に出て潰すプレーを得意とする選手なので、”撤退”ではなく勇気を持った”前進”に期待したい。実際、この試合でもDFラインからの1本目をカットできた場面があったので、今後も同様の対応を増やしてほしいと思う。(下図参照)

⑤ 改善策(攻撃面)

 今回の記事は守備面での課題と改善策について主に述べた。攻撃面に関しても当然課題はある。個人的には、クロスを中心とした攻撃の形そのものは狙い通りのものが出せた印象を受けた。従って、改善点としてはクロスとシュートの質を挙げたい。クロスに関しては、現状 その多くが中央の小川(航)とルキアンのヘディングを狙うパターン。もちろん彼らは対人に強くヘディングが得意ではあるが、当然相手CBのマークもハードになる。

 そこで、敢えて中央を外して別の選手を狙ったり、ルキアンを相手SBとマッチアップさせるといった形も見てみたい。また、クロスの質に関しては相手守備者の”視線移動”も意識する必要がある。タッチライン付近から中央に放り込む単純なクロスでは、相手の視線移動が少なく対応しやすい。ゴールライン近くまで進入してから入れるマイナスのクロスや、ペナルティーエリアの角から反対側のゴールエリアの角を狙う形(味方を相手SBの背後に飛び込ませる形)等も有効である。

3.まとめ

 ショッキングな負け試合の後は、何かとネガティブに考えてしまいがち。「ボールを握ってシュートを撃つ」という自分たちの形を作れたからこそ、余計にそうなってしまうかもしれない。だが、全否定する必要は全くないし、ポジティブな要素もしっかり認識しておきたい。

 個人的には、櫻内の成長を感じられた事がこの試合最大の喜びだった。磐田サポのみなさんは、櫻内に対してどんなイメージを持っているだろうか。少し前まで「フィジカルは強いけど、技術面と戦術面はあまり得意でない」と思っていたのだが、千葉戦でイメージが変わった。

 磐田のサイドバックはタッチライン際を単純にアップダウンするのではなく、サイドハーフと連携・連動して相手の守備ブロックを崩すタスクが与えられている。そのため、正確なパス技術やサイドハーフとの流動的なポジションチェンジといった技術面・戦術面の両方が求められる。千葉戦では、ぎこちないながらもこれらのタスクを着実にこなす櫻内が居た。まるで、昨季終盤の小川大貴を見ている様な感覚だ。

 小川大貴は、今やフベロ監督のファーストチョイスとなって絶対的な信頼を勝ち取ったサイドバック。元々、技術面・戦術面に長けた選手ではなかったが、成長してここまでの存在となった。櫻内も同じ道を辿るかもしれない。そう期待させてくれた事は、千葉戦におけるポジティブな出来事としてしっかり認識したいと思う。

 とは言え、すぐに次の試合がやってくる。試合間隔が極端に短いため、リカバリー中心のメニューが多くなり戦術的な練習を満足には行えないだろう。だからこそ、守備面での問題を人の入替えによって解決を試みる可能性はある。感情論で「〇〇を使うな!」という意見は論ずるに値しないが、現状の課題を踏まえた上で別の選手の可能性を考えるなら議論として成り立つ。いずれにしても、次の町田戦で3ポイントを掴み取って重苦しい雰囲気を吹き飛ばしてほしいと心から願う。


試合情報
磐田 1 – 2 千葉(1-2 , 0-0)
主審:山岡 良介 副審:岩田 浩義・金次 雄之介 4th:竹田 明弘
入場者数:3,174人(入場人数 制限有)
天候:晴れ

2 COMMENTS

たなし

すばらしいです。
あの試合はジュビロ対ジュビロだっただけに。。
かなり滅入ってDAZN見返しも出来ていませんでしたが、前向き頂きました。
ありがとうございました。 
ところでなのですが。
今シーズン個人的に期待していた上原選手と松本選手が去年程躍動出来ていないように思います。
去年いなかった大森選手と伊藤選手が大黒柱になっていますが、昨年からのメンバーの奮起を期待しているのですが。
いつかその辺りの見解などもお聞かせいただければと思います。
これからもジュビロ共々応援しています。 
奈良県のアラフィフジュビロファンでした。

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まっつん

コメント、ありがとうございます。

松本選手に関しては、磐田のサイドの崩し方を相手に研究されているという部分が大きいと思います。自分たちの良さを出そうとするJ1に対して、相手の良さを消すチームが多いJ2ならではの難しさかもしれません。上原選手に関しては、ミドルシュートの精度向上・ポカミスを減らす、といった事ができれば もう少し評価は上がってくるかなと。

チームとしてもなかなか結果が出ないですが、昨季からのメンバーにも期待したいですね。

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