【対策の対策の糸口】J2 第10節 ジュビロ磐田×松本山雅 マッチレビュー

 今季初の連勝をかけてジュビロ磐田がホームで迎え撃つは、布監督率いる松本山雅。プレビューで述べたとおり、3連敗中であり再開後はアウェイ未勝利と明らかに波に乗れていないチームだが、油断はできない。前任者のDNAを引き継ぐ山雅は磐田のボール保持を阻害するプランで来ると思われたからだ。

 終わってみれば試合結果は2-1の勝利。今季初の連勝に加えて、初の逆転勝利となった。山雅の先制点はなぜ生まれたか、そして磐田は山雅の守備をどの様に攻略したか。この記事では、両チームの攻守の狙いにフォーカスをあてて試合を振り返る。


1.システム及びメンバー構成

【ジュビロ磐田】
 ホームの磐田はいつもの4-4-2。CBは前節怪我から復帰した大井が引き続きスタメンの座を勝ち取った。その他も、右サイドの松本昌也と小川(大)を除いて、愛媛戦と同じメンバー構成となった。

【松本山雅】
 フォーメーションは予想どおりの3-4-3。セルジーニョの復帰は見送られ、2シャドーは中美と鈴木のコンビ。横浜F・マリノスから期限付き移籍で加入したばかりの前がベンチに入った。

それでは、試合を振り返っていこう。いざいざ!

2.試合のポイント

① 山雅の攻撃の狙い

 プレビューで述べた2つの形(1トップの阪野へのロングボールと、サイドで形成した菱形を変形させながらの前進)以外に、山雅はもう1つの狙いを持っていた。サイドからのクロスである。山雅のビルドアップにおいて、中央を通させない磐田と中央を使わない山雅の利害は一致していたと思う。そのため、サイドでどの様な局面になるかが焦点となった。

試合前のミーティングから、相手はクロスの対応に課題があるということは分かっていた

 山雅の先制点をアシストした高橋のコメントである。一口に”クロス”と言っても様々なパターンがあるが、山雅が狙っていたのは素早いサイドチェンジを織り交ぜたクロス攻撃だと感じた。先制点は、宮崎が鈴木をフリーにした事が失点の直接的な原因と考えるが、ここではクロスボールに至るまでの流れに注目したい。

  25分17秒、山雅の右サイドのスローインで再開する場面。スローインからのボールを受けた鈴木に対し、磐田は宮崎と山田の2人で対応するが剥がされてしまう。山田が剥がされた事に加えてFWのプレスバックが無かったため、藤田→久保田→高橋と“DH経由”でのサイドチェンジを許す格好となった。これによって松本昌也のスライドが遅れて高橋へのアプローチが甘くなる。そして、余裕がある高橋からスーパーなクロスが放たれた、という一連のシーンであった。(下図参照)

※下図は左右にスライド可能です

 最終的にヘディングした鈴木のマーク以外に、DH経由でのサイドチェンジを許してしまった事にも問題があると感じた。対照的だったのが直前にあった24分35秒、同じく山雅の右サイドからのスローイン。ここでは、結果的にサイドチェンジされるものの、小川(航)と山田の誘導により”CB経由”を強制する事に成功。松本昌也が余裕を持ってスライド出来たため、前進を許さなかった。

 DH経由のサイドチェンジの阻止。実は、今季 他のJ2チームが磐田に対して採るプランである。守備側から見て、なぜCB経由の誘導が有効かというと、繰り返しになるがサイドチェンジを遅らせる事でその後の対応で後手を踏まなくなるから。磐田のボール非保持は4-4-2でブロックを組むスタイル。ハイプレスをかけて前からハメに行く場合もあるが、過密日程と猛暑によって90分は持続できない。

そのため、ミドルゾーンでブロックを組んで待ち構える時間も必要となる。4-4ブロックの守備の肝はブロックの密度を高く保つ事と、相手の左右の揺さぶりに対して素早くブロックを移動(スライド)させる事だ。だからこそ、スライドを遅らせないようにするために、DH経由のサイドチェンジの阻止を意識すべきである。今後の試合において失点を減らすためにも、改善が必要なポイントと言えるだろう。

② 2つの前進ルートと前プレ剥がし

 3-4-3の前3枚によるハイプレスで磐田DF陣の時間を奪うと思われた山雅であったが、蓋を開けてみれば答えはNOであった。正確に表現すると、ハイプレスが全く無かった訳ではなく、時間や状況によって使い分けていた。過去9試合で相手のハイプレスに苦しんでいた磐田に対し、なぜ積極的なプレスを実行しなかったのか。

 試合後の監督・選手コメントでヒントが無かったので憶測になってしまうが、過密日程を考慮して常時の前プレスを回避したのではないだろうか。自軍のコンディションを鑑み、連続した前プレスを取るか、後ろを重くしてブロック内の数的優位性を保つか。結果として、後者でのスタートを選択したのではないかと予想する。

 そんな山雅に対し、磐田はどのように前進したか。1つ目はDFラインからのロングボールで3バックの脇のスペースに人とボールを送り込む形である。特に、ルキアンを左右のCBにぶつけて質的優位で起点を作り、そのまま相手ブロックを押し込む場面が何度も見られた。また、中盤をすっ飛ばしてFWに当てる形はセットオフェンス時だけではなく、ポジトラからも同様の狙いが見て取れた。

 そして、もう1つのパターンが地上戦でのプレス回避である。仕組みはこうだ。前述のとおり、時間帯によっては前プレスをかける松本山雅。前3枚が磐田の後方3枚にがっちり噛み合う。中央の上原から伊藤へ。伊藤から宮崎へという流れは従来どおり。通常であれば宮崎は左足にボールを持ち、前方を向いた状態からパスの供給先を選択するが、29分に見られたのは伊藤からのボールを右足ダイレクトでルキアンに当てる形であった。(下図参照)

 何度も見られた形では無かったものの、相手の前プレスを回避する有効なパターンだと感じた。山雅は積極的な前プレスを常時選択する事は無かったが、今後対戦するチームの中にはハイプレスをかけ続けるクラブも出てくるだろう。これまでは、激しい前プレスを受けてロングボールを蹴らされてボールを手放すか、プレスによってボールロストする事が多かった。SBからダイレクトでFWに当てるこの形は、今後、前プレスを回避する”対策の対策”として期待したいところだ。

③ 試合をクローズする選手交代術

 続いては、フベロ監督の選手交代に焦点を当てていこう。前半のうちに逆転した磐田は、後半も攻め続けるが追加点を奪えない。1点差という状況のまま試合は終盤に突入していく。当然、山雅は攻撃的なカードを切ってくるだろう。どの選手がいつ投入されるか、フベロ監督は山雅ベンチの様子をうかがっていたに違いない。

 山雅は60分にアウグストを投入。対面するのは大井と小川(大)なので、そのままで問題無いと判断。続いて、山雅はイズマをスタンバイ。ビハインドなので恐らくトップの阪野は残すだろう。となると、右シャドーでの起用が予想され、対面するのは伊藤と宮崎となる。

 フベロ監督はここまで読んで、櫻内をいつでも投入できるようスタンバイしていたのではないだろうか。正直、宮崎に比べて櫻内が守備に長けた選手とは言い難いが、少なくともフィジカル面では優位性がある。74分にイズマと櫻内の交代が重なったのは、決して偶然ではないと考える。その後、90分には藤田を投入して中央を3枚で固めて、逃げ切りに成功した。(下図参照)

3.今後の展望

 今季初の連勝を達成した磐田。「試合のポイント」で記載した内容以外にも、見せ場を多く作った。特に、ネガトラからのカウンタープレスによる即時奪回は見事と言って良い出来。小川(航)・大森・山田・上原らのプレス精度は特筆すべきで、試合中に感嘆した磐田サポも少なくなかったのではないだろうか。

 PK獲得に繋がったシーンもネガトラからのカウンタープレスが起点になっている。小川(航)・大森・上原の3人でボールを奪回し、ショートカウンターで相手DFラインの裏を攻略してファウルを誘う流れであった。

 試合全体を見れば、クロスにおける相手選手のマークやスローインからのサイドチェンジで相手の進入を許す課題が見られたものの、ルキアンへのロングボールやネガトラからの即時奪回というチームの狙いを何度も出せていた。また、完璧とは言えないが、相手の前プレスを回避する新たなビルドアップルートも発見した。1点差の薄氷ながら、自信を深める納得の勝利と言える。

 そして、12日にはアウェイに乗り込んで大宮アルディージャとの一戦を迎える。1試合消化が少ないながら、勝ち点19の4位につける大宮。5連戦の2試合目。過密日程の影響で、上位陣でもポロポロと勝ち点をこぼすチームが出てくるだろう。スタートダッシュに出遅れた磐田としては、苦しいコンディションではあるものの勝ち点を積んで、上位陣に食らいついて行きたいところだ。9試合で4失点という大宮の堅守を粉砕して、勝ち点3を掴み取ってほしい!


試合情報
磐田 2 – 1 山雅(2-1 , 0-0)
主審:村上 伸次 副審:櫻井 大輔・坂本 晋悟 4th:岩田 浩義
入場者数:2,546人(入場人数 制限有)
天候:晴れ

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