【予期せぬ座礁】J2 第2節 京都サンガ×ジュビロ磐田 マッチレビュー

新型コロナウィルスによる4ヵ月もの中断が明け、ついに再開したJ2リーグ。

中断期間中に公開したトレーニングマッチでは好調さを存分にアピールしていたジュビロ磐田であったが、再開試合の蓋を開けてみれば0-2の敗戦。それも、枠内シュート1本という、完敗と表現して差し支えない程の屈辱的な内容であった。2月の山形との開幕戦に勝利し、J1昇格に向けて前途洋々の船出を見せた磐田にとっては”予期せぬ座礁”となってしまった。

68%というボール支配率が示すとおりボールは握れたにも関わらず、枠内シュートが1本に抑えられたのは何故か。この記事では、磐田の無得点にフォーカスを当て、京都の守備陣と磐田の攻撃について述べる。また、京都守備陣の比較対象として、開幕戦で対戦した山形の守り方との違いにも触れていく。


1.システム及びメンバー構成

【ジュビロ磐田】
スタメンは中断期間中に行われた沼津戦から1人のみ変更。小川航基の相方として、三木ではなくルキアンをチョイス。ボランチにはリーグ戦初先発となる伊藤、CBには移籍後初出場となる大武がスタメンの座を勝ち取った。システムは毎度おなじみの4-4-2

【京都サンガ】
驚きのスタメンであった。個人的にはベンチに入れれば御の字と思っていた荒木 大吾がスタメンに名を連ねたのだ。試合前のこの情報により、4-4-2をチョイスする可能性もあると思われたが、實好監督が選択したのは5-3-2。まさかの新システムである。対磐田用のプランかは分からないが、この選択が試合の結果を大きく左右する事になる。
※ 京都GKは若原選手の誤記(7/4 追記)

それでは、試合を振り返っていこう。いざいざ!

2.試合のポイント

① スペースを埋める山形と球出しを制限する京都

まずは、山形と京都の守備(ボール非保持)の違いについて述べていこう。山形の守備は開幕戦のレビューで言及したとおり前線からハイプレスを仕掛ける時間帯があったものの、ブロックを組む際にはディフェンシブサードでスペースを埋める形を優先していた。アタックに出た後のスペースが使われる事を嫌い、スペースを埋めてディフェンシブサードで磐田攻撃陣を迎撃する狙いだ。

これによって磐田は、CBとSBを含めて、ミドルゾーンで前後左右の自由な球出しができていた。

一方の京都は、ディフェンシブゾーンではなくミドルゾーンでブロックを組む。FWの位置関係に基づいてアプローチのやり方を変える仕組みであった。その基準となっていたのが宮吉 拓実。宮吉のサイドは、間に合う場合は宮吉がCBにアプローチ。宮吉がいないサイドは、IHが前に出てCBに蓋をするという役割分担である。

※下図は左右にスライド可能です

2トップ脇からボールを進める磐田に対し、宮吉サイドは前線からの守備を頑張れる宮吉の特性を活かしながら、CBとSBに上手くプレッシャーをかける。宮吉がいないサイドはIH(金久保/曽根田)が蓋の役割を果たす。これによって、両サイドにおいてCB・SBからの自由な球出しを制限。ミドルゾーンの制圧に成功した。その結果、磐田は中盤より前でボールを自由に展開できず、DFラインを経由したサイドチェンジばかりが目立つ展開となった。

② 3人目の動きが遅い磐田

既に述べたとおり、磐田はCBからの縦パスが制限され、SBからの展開が中心となる。何が出来て、何が出来なかったのか。前半にあった2つのシーンを紹介しよう。

※下図は左右にスライド可能です

磐田が本来得意とするサイドからの崩しの形を作ろうとはしていたが、3人目の動きが遅く、相手の守備ブロックを破壊する事ができなかった。また、図で示した場面以外に、3人目が動き出してボールを受けるも、コントロールミスでチャンスを逃したシーンがあった。

しかし、逆の言い方をすれば、崩す形が何も出来なかった訳ではない。試合後の感想として「何も出来なかった完敗」と感じた人がいるかもしれない(かく言う私もそうであった)が、少なくとも崩すための仕込みはできていた。決定機には至らなかったが、SBがボールを持ち、FWやSHがフリーランで相手HV(外側のCB)を動かして急所にスペースを作れていた事は認識しておく必要があるだろう。

③ 5-3-2対策

京都が対磐田用のプランとして5-3-2を用意したのかは分からないが、今後、J2の他クラブが同じ策を用いて、この試合の再現を狙う可能性はあるだろう。5-3-2の対応策として、システム変更という手もある。しかし、フベロ体制ではボール保持時は3-1-4-2を継続して採用。そこで、この記事ではシステム変更以外の策について述べる。

3人目のプレー精度の向上

「② 3人目の動きが遅い磐田」で述べたとおり、崩しのお膳立ては出来ていたものの3人目のプレーの質に問題のある場面が散見された。動き出しを早める、ボールコントロールを正確にする、といった3人目のプレー精度の向上により、攻撃の質を更に高める事ができるだろう。

ビルドアップ隊による細かな崩し

基本的に、ボール保持時はCB・SB・アンカーでビルドアップ隊を構成する磐田。この試合では、ミドルゾーンを制圧されたためCBからの縦の球出しと、SBからアンカーへの展開が阻害されてしまった。そこで、プレッシャーを受けているミドルゾーンの狭い局面を、ダイレクトやワンツーを用いた打開が有効になるだろう。これによって、相手の前からのプレッシャーを外して、マークのズレを起こす。相手守備陣を迷わせた状態で相手アタッキングサードに進入する狙いだ。

フベロ監督が就任してから1年近くが経過し、戦術理解が深まっている様子は十分に窺える。今後は、これまで築いてきた戦術的なフレームワークの上に、個人レベルの改善(3人目のプレー精度の向上)や少数ユニットの連携(ビルドアップ隊による細かな崩し)の組み込みが必要になるだろうと感じた。

3.今後の展望

磐田にとって痛い敗戦ではあった。とは言え、収穫がゼロだった訳ではない。3人目の質が足りずに最終的にはチャンスにならなかったものの、デザインされた攻撃自体は何度か見せていた。また、個人に目を向ければ伊藤のリーグ戦初先発や三木の公式戦初出場は、チームにとって大きな経験値となるだろう。

公式戦としては昨年のJ1リーグ最終節(vsヴィッセル神戸)以来の敗戦であったが、当時と敗戦の要因は異なる。神戸戦はポドルスキーやサンペールといった個の力をベースにした攻撃にやられており、J2の他クラブが一朝一夕で真似できるものではない。それに比べれば、バイスとウタカの個の力はさておき、京都が見せたボール非保持のやり方はどのクラブも比較的再現しやすいと言える。実際に5-3-2で再現を狙うクラブも出てくるだろう。

これは磐田にとって新たな試練であると同時に、もう一段階上のレベルに進むために必要なステップとも言える。京都が見せた、これまでのフベロ体制で経験した事がないやり方に対応できるようになれば、暗礁を乗り越えてJ1昇格への航路を再び見いだせるだろう。悲観する必要は全くない。フベロ磐田の今後の成長に期待しよう。


試合情報
京都 2 – 0 磐田(1-0 , 1-0)
主審:谷本 涼 副審:村井 良輔・植田 文平 4th:小屋 幸栄
入場者数:無観客(リモートマッチ)
天候:晴

2 COMMENTS

サンガサポ

丁寧な分析ありがとうございます。1点だけ、京都のGKは清水ではなく若原でした。

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まっつん

画像の差し替えが難しいため、本文中に訂正のコメントを追加しました。ご指摘、ありがとうございました。

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